――星たちが
時をつげる――。
「リコッタ、この先に『扉』がある。
ここから先は一人で行くんだ」
「トトは・・・!?」
「一緒にいけるのはここまでだよ」
「そんな・・・ずっと一緒にいたいよ。このせかいにずっと・・・」
「ここにとどまっていたら、だめだよ」
「どうして?」
「もう夜が明ける。満月が終わると、二つのせかいをつなぐ扉が閉じる」
トトはゆっくりつなげる。
「このせかいは心地いいけど、ここにずっといると・・・もどれなくなる。
・・・リコッタの帰りを待っている人がいるでしょ?」
リコッタは顔をあげる。
「 元の世界に帰らなくちゃ」
そう言ってリコッタを見上げるトトの表情(かお)は、とてもやさしかった。
「・・・・・・・・・・・・また、会える?」
「リコッタが月の門をくぐろうと思えば、きっと。
こちらのせかいとあちらのせかいはつながっているんだ。
通り道はいつだって、リコッタの中にあるんだよ」
――空の星が流れ出した。
「さあ、行って。自分の樹を見つけるんだ」
空から視線をもどすと、もうそこにはトトの姿はなかった。
「トト・・・!・・・・・・さようなら・・・・・・」
リコッタは流れる星の先へ走り出した。
途中、トトの声を聞いた気がしてふり返ると、
遠くに白いかげが見えた。
それは立派な角を持った牡ジカの姿だった・・・・・・。
「忘れないで。星のかがやきを――・・・」
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