おちる―――
水と砂とともに。
家もみどりもすべて
砂になっていく。
「どうしよう、トト!」
「リコッタ、恐怖でこのせかいを見たら、道が閉じてしまうよ」
「だってこのままじゃ――」
落ちる――そう口をひらこうとする前に、
「言ったでしょ。ここはリコッタの―」
トトの瞳がリコッタの瞳を映す。
「・・・わたしのすすむせかい?」
トトは満足げに鼻を鳴らした。
とうとう、まわりの足場も崩れ出した。
「落ちる」という恐怖が足をすくませる。
でも、トトと一緒なら。
大きくひと呼吸する。
リコッタはトトを抱きかかえると、
最後の足場をおおきく蹴り、空の中へととびこんだ。
「・・・・・・目をあけて!」
引き裂く風の音にまぎれ、トトの声が聞こえた――瞬間、
かばんの中のスケッチブックが飛び出し、空(くう)に舞った。
自分の描いた絵がバラバラと風にめくられる。
とぎれかけたせかいが内側から
ゆっくりまわり出す――・・・・・・
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